職業生活体験作文
優秀賞作品
こちらでは優秀賞に選ばれた6作品をご紹介いたします。
優秀賞
私の選んだ職場
盛岡セイコー工業株式会社
「貴方が盛岡で一人目の設計メンバーです」配属先決定後、上司から伺った衝撃の一言である。私が配属された職場は、一昨年十月に立ち上げられたばかりの新しい職場で、メンバーが皆親会社であるセイコーウオッチからの出向者という、とても特殊な環境であった。大学時代は機械系を四年間学び、設計の仕事に興味を持っていたが、教授から「設計の仕事に携われる人は一握りだ」と言われ諦めていた。しかし、そんな私が社内で初めての設計メンバーとなってしまったのである。私がこんな大事な役割を担って良いのだろうか。生まれてから大学卒業まで宮城県にある実家で暮らしていた私は、四月から初めての一人暮らしと新社会人としての不安がある中、追い打ちをかけるように不安が募っていったのをよく覚えている。
職場の先輩方は皆とても能率良く仕事をこなしていた。私も早く先輩方のようにならなければならない、そう焦る気持ちとは裏腹に会議や打合せに参加しても何も分からない自分に自信を無くし、実家の両親に電話を掛けたことがある。すると両親から「今は出来なくても仕方がない。先輩方から沢山学んで、それを自分なりの形に変えられるようになりなさい」と言われた。それから私は先輩方に分からないことをよく聞くようになった。今までは迷惑が掛かると思い聞けなかったが、声を掛けてみると皆優しく教えて下さった。そして、分からないことは自分一人で調べるより聞いた方が良いことに気付いた。以前は自力で成し遂げることが正義だと感じていたが、誰かにアドバイスを求めることで自分にはなかった考え方や方法などを知ることができ、それが今後の自分自身の力となるのだ。これは、私が社会人になってからの大きな気付きであった。私の職場では、些細なことでもよく話し合いを行い、問題点を共有しているように感じる。話し合いで様々な視点から問題点を捉えることにより、解決策が見つかることが多いのだ。実際に私自身も初めて治具の設計を任された際に、話し合いを行うことで自分では思いつかなかったアイデアを取り入れることができ、それが良い結果へと繋がった。設計は一人で行うものではない。皆で協力して作り上げるものだということを、この職場で働きながら知ることが出来た。
年が明け、早くも入社から一年が経とうとしている。先輩方は数年後には親会社へ戻る可能性もあり、それまでに私を一人前にしようと沢山のことを教えて下さっている。残された期間は長くない。私は両親から言われた「自分なりの形に変化させる」ことをまだ十分に出来ていない。今までは教わったことをそのまま行うことで精一杯だったが、これからは自分の考えも取り入れてより良い成果を出すことに努め、周囲の期待に応えられるよう日々精進していきたい。